俳句の作り方 薔薇の俳句
薔薇崩る激しきことの起る前 橋本多佳子ハシモトタカコ
ばらくずる はげしきことの おこるまえ
薔薇が初夏の季語。
薔薇は中国から渡来し、そうびと呼ばれました。
菅原道真スガワラノミチザネの歌や紀貫之キノツラユキらの
「古今集」コキンシュウにも登場します。
橋本多佳子は感受性の鋭い俳人です。
形が乱れた薔薇を見て「激しきこと」を予知しました。
薔薇崩る激しきことの起る前
大きな不安を抱えていた時、散りかけの薔薇を見た作者。
「激しきこと」が起こるのではないかと危惧します。
「激しきこと」とは何だったのでしょう?
激しいをネットの辞書で引いてみました。
「勢いが大変強い・・・激しい風雨、気性のはげしい人」
「程度が普通でない」
大地震が来るのかもしれない。
肉親の乗った列車が鉄橋から落下するのかもしれない。
いずれにせよはっきりとは分かりません。
橋本多佳子は不安の輪郭を捉えていないのです。
漫然とした強大な不安に囚われているのです。
それだからこそいっそう苦しい。
薔薇崩る激しきことの起る前
さてここで、橋本多佳子の略歴を紹介します。
東京生まれ。
1899年、明治32年生まれ。1963年、昭和38年没。64歳。
23歳で俳句を志しました。
山口誓子ヤマグチセイシに師事しました。
山口誓子は反抒情的な句風で知られています。
また、4Tと称せられたうちの一人です。
4Tとは、中村汀女ナカムラテイジョ・星野立子ホシノタツコ・三橋鷹女ミツハシタカジョ、
そして橋本多佳子です。
下の名前がアルファベットのTで始まるので4Tです。
薔薇崩る激しきことの起る前